首都直下地震が30年以内に70%の確率で発生すると発表されています。正確な予知ができない状況でこの異常に高い確率を前に私たちはどのようにすべきなのでしょうか。
もちろん生命を守ることが最大の目的ですが、国土強靭化基本法も示すように、一日も早く平常を取り戻すことも重大な課題です。世界規模のサプライチェーンの中にある多くの企業にとっては、復旧の遅れは従前の事業を継続できなくなることに繋がります。被害を最小限に抑えることはその大前提であり、被害抑制の準備と共に、生じてしまった被害を復旧するための準備も必要です。
東日本大震災の折に、ビルの管理運営にあたっていた経験から、災害時にビルが果たすべき役割、ビルが問われる責任などを痛感しました。そして、ビルの経営にかかわるいろいろな立場の方やビルを利用する多くの人が、平時からどのように被害の軽減、早期復旧を図る準備をすべきなのかを深く追求する必要があると考え、当、ビル減災研究所を設立しました。
ビルと言っても、オフィスビル、商業施設、ホテル、工場、病院など多様ですし、規模も低層、超高層、小型、大型、その組み合わせは無数にあります。マンションもビルの一種と言えなくもありません。当然、減災対策も多様となりますが、一つずつ課題を解決していくしか方法はありません。当研究所では、別に記しております問題意識に沿って、検討・提言することを通じて、ささやかながら社会貢献したいと考えております。
2015年4月
一般社団法人ビル減災研究所 代表理事・所長 田中純一
1974年 慶應義塾大学法学部卒業、三井不動産株式会社入社
ビル事業本部ビルマネジメント2部長などを経て、三井不動産ビルマネジメント株式会社専務取締役、ファーストファシリティーズ(現・三井不動産ファシリティーズ)株式会社代表取締役社長、三井不動産ファシリティーズ株式会社取締役会長など歴任
2015年3月退任とともに4月一般社団法人ビル減災研究所代表理事に就任
ビルの震災被害を軽減するハード・ソフトの対策
震災被害からの早期(ビル内事業活動)復旧を図るためのハード・ソフトの対策
ビルの機能維持回復のための管理会社ネットワーク
震災被害に際してのビルオーナーの民事的責任
自助・共助・公助のあるべき関係
帰宅困難者の発生抑制と滞在施設確保
計画の実現を担保する訓練のあり方
帰宅困難者をめぐる諸問題
一時滞在施設における二次災害と建物所有者の損害賠償責任
二次災害の予防措置
施設提供者の連携
二次災害への保険対応
帰宅困難者の発生抑制
マンションにおける帰宅困難者受け入れ
帰宅困難者への情報伝達の仕組み
東京防災の読み方
高齢者の減災対策
BCPとオフィスビルの機能維持の連携
地球温暖化対策とオフィスビル
マンションの標準管理規約の改正動向
区分所有ビルにおける災害対策の課題